右脳教育には欠かせない存在の「ドッツカード」。
私が講師をしていた七田チャイルドアカデミーでも、赤ちゃんから年長さんまで全ての学年のレッスンでドッツカードを見せていました。
今回は、ドッツカードの元祖であるグレン・ドーマン博士の著書『赤ちゃんに算数をどう教えるか』を参考に、七田チャイルドアカデミー講師時代の私の経験も踏まえて、ドッツカードの効果的なやり方のポイントをご紹介します。
ドッツカードの効果を高めるやり方は?ドーマン博士から学ぶ7つのポイント
ドッツカードはできるだけ早くスタートする。
ドッツカードの目的は、数の”真の値”、すなわち数の量感を認識できるようにすること。
1(数字)= いち(数詞)= ●(数量) を結びつける、ということです。
ところが2歳をすぎると、年々実際の量や真の値を認識するのが難しくなるとドーマン博士は述べています。
レッスンで子どもたちを見ていても、量の概念より先に「いち、に、さん・・・」と数を唱えることを覚えると、数をまとまりとしてとらえるのではなく1つずつ数えようとしてしまうため、全体量を瞬間的に把握することが難しくなってしまいます。
そのため、できるだけ時間もエネルギーもかけずに算数を教えたいなら1歳以下から始めるのが理想。
ドッツカードの取組は、色を識別できるようになる生後3ヶ月頃から可能です。
ドーマン博士のドッツカードは、赤ちゃんの未熟な視覚経路でも見分けられるように大きな赤丸(ドッツ)が使われています。
とはいえ
「うちの子はもう2歳だから手遅れだ・・・」
などとあきらめなくても大丈夫。
3歳頃までの右脳が優位に働く時期であれば、じゅうぶんにドッツカードの効果が期待できます。
親子ともに楽しくリラックスして取り組む。
ドッツカードは子どもに算数を教えるための取り組みですが、「子どもは勉強が嫌いだという思い込みは誤りであり、子どもはあらゆることを学びたくてうずうずしている」とドーマン博士は述べています。
子どもに算数のお勉強をさせる、という気持ちで身構えて取り組むと、その緊張感が子どもにも伝わってしまいます。
まずは親御さんがドッツカードの取組を遊びやゲームとしてとらえ、親子がともに楽しく学ぶことが基本。
取組を行う時間は、一日のうちでおなかが空いていたり眠い時間は避け、子どもが元気で素直で機嫌のよい時間を選びましょう。
もしドッツカードの取組中に、親御さんとお子さんの両方が気持ちのいい時間を過ごせていなければ、その時は取り組みをやめ、別のタイミングで行うようにしましょう。
また取り組みを行う環境も大事。聴覚的・視覚的にも子どもの気を散らすものがない場所を選びます。
部屋が雑然と散らかっていたり、周りにおもちゃなど気になるものがある等、余計なものが目に入ってこないようきちんと片づけましょう。
親子ともにリラックスした状態でドッツカードの取組を行うには、取り組み前にプリレッスンをしてみるのもおすすめです。
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ドッツカードを見せる時はすばやく・短時間で行う。
ドッツカードを見せるスピードは1枚につき1秒以下。それより速くないと右脳に働きかけることができません。
スピードが速ければ速いほど、子どもの興味と関心を引き付けることができます。
なおドーマン式のドッツカードは28センチ四方の正方形。(※七田の白紙カードでいうと大のサイズになります。)
七田の平均的なドッツカード(A5サイズ)に比べるとフラッシュがしづらいので、子どもに見せるまえに十分練習をしてから見せるようにしましょう。
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また取組全体の時間もきわめて短くすること。
ドッツカードの取組では「退屈」がいちばんの警戒信号、とドーマン博士は述べています。
とにかくスピード重視で行いましょう。
最初は1回の取組でドッツカード5枚1セット×2セットを1日3回行いますが・・・
カードを見せる時間は1枚1秒以下なので、1セット5秒×2で10秒。1回の取組はほんの数秒で終わります。
子どもがやめたいと思う前にやめること。これが、子どもの興味や意欲を失わずに取組を継続させられる秘訣です。
1日3回のうち2回までは見てくれるのに3回目では嫌がる場合は1日2回に減らすなど、常に子どもの様子を注意深く観察するようにしましょう。
ひんぱんに新しい材料(カード)を加える。
ドッツカードの内容をしっかり定着させようと、ついつい同じ内容を何度も繰り返し見せたくなってしまいがちですが・・・
同じものを何度もくり返すよりも新しいものを見せていくほうが、子どもの好奇心と学習意欲が満たされるため効果的です。
「子どもが先へ先へと進むのを恐れてはいけない。20問を何度も繰り返すかわりに1000問を素早く楽しくやる。」とドーマン博士は述べています。
常に新鮮な気持ちでカードを見ることができるように、カードの見せ方に変化を加えていきましょう。
*同じカードでも、見せる順番を変える
例:数の順番どおりに見せる(1,2,3,4,5)→バラバラに見せる(3,1.5,2,4など)
*1日2枚ずつ新しいものに交換していく
例:1日め(1,2,3,4,5)→2日目(3,4,5,6,7)
子どもの注意力や興味が薄れてきたら、新しいカードを導入するスピードを早め、1日3枚でも4枚でも新しいものを導入していきましょう。
そのためにも、ドッツカードは常に余裕を持って準備することが必要。
カードを手作りする場合、作成のペースが間に合わなくて、やむを得ず同じカードを繰り返し見せるということにならないよう気を付けましょう。
教え方に一貫性をもたせる。
ドッツカードを見せながら数字や数式を読み上げる時は、常に一定の調子を崩さず、いつも同じ言葉を使いましょう。
例えば「1+2=3」という数式を見せる時は常に「1たす2は3」と言うようにし、日によって「1と2を足したら3になります」などと別の言い方をしてはいけません。
というのも、ドッツカードで子どもが算数を学べるのは、子どもに事実だけを与える(ドッツを見せる「●」+数詞・数式を聞かせる「1」)ことで、子どもが本能的に法則(これは1だ)を自分で発見するから。
そのためには一貫した教え方が必要で、使う言葉が変わると法則も変わったと子どもは思ってしまいます。
またドッツカードの取組は毎日続けることが一番ですが、出産、引っ越し、旅行、病気など、日常生活に大きな変動がある場合はいったんプログラムをストップするほうがよいとドーマン博士は述べています。
こういうときに中途半端にドッツカードの取組を行っても、親子とも不満が残るだけ。
きちんと継続できる状況になったら、中断したところから続けましょう。(最初からやり直したりしてはいけません。)
テストはしないが、問題を解く機会(=アウトプット)は必要。
テストとは、教えたことがちゃんと理解できているかを確かめること。つまり、テストという行為ではどうしても正解すること=結果を求めてしまいます。
そのような親の気持ちが子どもに伝わると、ドッツカードの取組に緊張と不快感が結びつきます。
つまりテストをすることで子どもの学習意欲は減退し、学習効果が落ちてしまうのです。
だから子どもには教えるだけで、テストはしないこと。
とはいえ、ドッツカードでインプットしたことを定着させるためにはアウトプットが必要。(アウトプット→「選ぶ」「言う」「書く」。)
なので、テストのかわりに問題を解く機会(=子どもが望むときに、自分の知識を披露する機会)を与えてあげましょう。
まだおしゃべりできない赤ちゃんでも、「選ぶ」(手を伸ばしたり視線を向ける)ことにより「問題を解く」ことができます。
たとえば2枚のドッツカードを見せて「32はどっち?」と聞き、子どもに選ばせます。
もし子どもが正しいほうを選べば大よろこびして見せ、もし違うほうを選んだときは「こっちが32」「これは15」というだけにします。
ドッツカードで問題を解く(アウトプット)ときのポイント
・答えることを強制しない。子どもが答えたい時だけにする。
・正解・不正解にこだわらない(結果を求めない)。
・あくまでも遊び感覚で楽しく行う。
正しいステップで教える
子どもに算数を教えるステップは以下の流れになります。
●ステップ2.等式(たし算・引き算・かけ算・わり算)
●ステップ3.数列、より大きい・より小さい、等式・不等式、分数、初歩の代数
●ステップ4.数字の認識
●ステップ5、数字を使った等式
●ステップ1.量の認識
ステップ1の目的は、数(量)を識別できるようになること。
いち、に、さん・・・という数(数詞)は、ものの量を表す記号に過ぎません。
ドッツカードの最初の段階では、数字の”真の値”である「量」と数詞をマッチングする、すなわち「●」=「いち」、「●●」=「に」・・・がわかるようにしていきます。
準備するのは1~100までのドッツカード。
2歳以上ですでに数を数えられる子は、最初のうちはドッツを数えようとするかもしれませんが、素速くフラッシュするうちに数えるのをやめます。
ステップ1<量の認識>の取り組み方
1〜100までのドッツカードを5枚ずつのセットとし、
●1日目:1~5のセットを3回
●2日目:1~5のセット、6~10のセットを各3回(計6回)※1回目は数の小さい方から順番に、2・3回目は順不同(バラバラ)に見せる
●3~5日目:2つのセットを混ぜあわせ、5枚ずつのセットにして見せる。
※次に何が出てくるかわからないようにして、取組を新鮮で興味深いものにするため
●6日目~:新しいカードを2枚加えて古いカード(数の小さいもの)を2枚除く。※6日目:3~12,7日目:5~14
上記のやり方で100まで進める。※20まで教えたら、並行してステップ2も行っても良い。
●ステップ2.等式(たし算・引き算・かけ算・わり算)
ステップ1で20までの量を認識できるようになったら、それらの量を合わせれば別の量が生まれることも子どもは理解し始めます。
ステップ2の目的は、数(量)を加えたり分けたりする方法を学ぶこと。
ステップ1で見せた1~20までの数を、計算式の答えとして見せていきます。
※カードをフラッシュ(1枚ずつカードを見せては引っ込める)のではなく、最後に式全体が子どもに見えるようにしていきます。
例:「1+2=3」の場合
1(●),2(●●),3(●●●)のドッツカードを膝の上に置いておく。
「1」と言いながら「●」のドッツカードを見せて、子どもに見えるよう床に置く
→「たす」と言ってから「●●」のカードを手に持ち、「2」と言いながらそのカードを見せて床に置く
→「は」と言ってから「●●●」のカードを手に持ち、「3」と言いながらそのカードを見せて床に置く
このような流れでカードを見せていきます。
計算式は たし算→引き算→かけ算→ゼロのカードを使ったたし算・引き算・かけ算→わり算の順で進めていきます。
※たし算:● たす ●● は ●●●(1+2=3)
※引き算:●●● ひく ●● は ●(3ー2=1)
※かけ算:●● かける ●●● は ●●●●●●(2×3=6)
※わり算:●●●●●●●● わる ●● は ●●●●(8÷2=4)
ステップ2<等式>の取り組み方
●1~20までの数で二項式を作り、1回3つ×3回=1日9種の式を見せる。
※1回の取組で教える等式では、予測可能なパターンは避ける。
例;1+2=3,1+3=4,1+5=6といったパターンではなく1+2=3,2+5=7,4+8=12などバラバラにする。
※同じ等式を繰り返さず、毎日新しい等式を教える(※1〜20までのカードで190類の二項式が作れます。)
●1セッションで3種類の引き算×1日3セッションと並行してドッツカード5枚2組を1日3回ずつ見せることも続け、100までの大きな数を教えていく。
●毎日9種類の足し算を行って2週間たったら引き算に入る。→以降、2週間ごとにかけ算→わり算 と進める。
気をつけることとして、「1+2=3」の「たす」や「は」の意味は説明しないようにしましょう。
また式を読み上げるときは一定の調子を崩さず、いつも同じ言葉を使いましょう。
(「1たす2は3」を「1と2を足したら3になります」などと言わないこと。)
子どもは見たもの・聞いたもの(=事実)から法則を引き出します。使う言葉がかわると法則も変わったと思ってしまいますので、一貫した教え方が必須です。
●ステップ3.数列、より大きい・より小さい、等式・不等式、分数、初歩の代数
数列
数列とは、一定の規則にしたがった一連の数字のつながり。
このような数列を見て、子どもは数の並び方のきまり(パターン)に気づき、次にどのカードがくるかを予測することができるようになっていきます。
より大きい・より小さい
お子さんはこの段階で「より大きい」「より小さい」の概念を理解できていますが、その状態をあらわす言葉をまだ知りません。
なので、「>」(より大きい)・「<」(より小さい)の記号を書いたカードを用いてその言葉を教えます。
やり方は、25>5など、3枚のカードを見せるだけ。
カードをフラッシュ(1枚ずつカードを見せては引っ込める)のではなく、床に座って、数を言いながら次々にカードを床に置いていき、3枚のカードを全部並べます。
1回の取組で3組のカードを見せ、数日たったら問題を解く機会を与えます。
例:「68」と「>」の2枚のカードを置いてから、「こちら側には28と96どっちがくる?」と聞いて、2枚のカードから選ばせます。
等式・不等式
数学には欠かせない6つの数学記号(+、-、×、÷、=、≠)のカードを用いて、等式もしくは不等式を作って見せます。
例:
4+5=3+6(たし算の等式)
2+4≠2+5(たし算の不等式)
10-3=8-1(引き算の等式)
8-6≠8ー7(引き算の不等式)
3×5=5×3(かけ算の等式)
5×4≠2×12(かけ算の不等式)
100÷50=10÷5(わり算の等式)
20÷5≠10÷2(わり算の不等式)
見せ方は「より大きい・より小さい」のときと同様、カードをフラッシュする(1枚ずつカードを見せては引っ込める)のではなく、床に座って、カードを1枚ずつ置きながら「4たす5は、3たす6と同じです」「2たす4は、2たす5とちがいます」などと言い、最後には1つの式全体が見えるようにします。
分数
0~100までのドッツカードを使って分数を教えます。
例えば、10のカードを見せながら「10の10分の1は」と言って、1のカードを見せながら「1です」と言います。
例:
●●●の3分の1は●(3の3分の1は1)
●●●●●●●●●の3分の1は●●●(9の3分の1は3)
●●●●●●●●●● の10分の1は●(10の10分の1は1)
代数
代数とは、数のかわりに文字を使って解く方程式などのこと。
ドッツカードの取組でも、文字のカードを用いて代数の等式を見せることができます。
代数でよく使われるのが「x(エックス)」ですが、「×(かける)」の記号と混同しやすいので、「y(ワイ)」を使うことをドーマン博士は推奨しています。
例えば5+y=7の場合、
「5たすyは7」と言いながら、
「●●●●●」 「+」 「y」 「=」 「●●●●●●●」
の5枚のカードを1枚ずつ床に置いていきます。
その後、「では、yはいくつでしょう?」と」と聞いた後、「この等式では、yは2になります。」と答えを言いながら「y」「=」「2」の3枚のカードを見せます。
このようにして代数の等式をたくさん見せた後に、今度は「y」に入るべき答えを2枚のドッツカードから選ばせます。
●ステップ4.数字の認識
数字とは、数の”真の値”(実際の量)をあらわす記号。
子どもはすでにここまでの段階(ステップ1~3)で、数(数詞)と数量が結びついている状態ですので、そこに数字(記号)をマッチングするのが目的です。
ステップ4<数字の認識>の取り組み方
●5枚1組の数字カード×2セットを1日3回見せる。
※1回目は数の順番どおり、2・3回目は順不同(バラバラ)に見せる
●ステップ1<量の認識>の時と同様、新しいカードを2枚加えて古いカード(数の小さいもの)を2枚除く。
※必ず、1セットに1枚新しいカードが入るようにする。
●100までいったら、それ以上のいろんな数字を見せてもOK。
ただし、ありとあらゆる数字を見せようとしないこと。0~100までで、数字の土台は終えたことになる。
●ステップ5.数字を使った等式
ステップ5<数字を使った数式>では、ドッツカードのかわりに数字のカードを用いて数式を見せます。
準備するのは、数式が書かれたカード。※45cm×10cmほどの厚紙に、黒のペンで数式を書きます。
答えの書いていない等式(たし算・引き算・かけ算・わり算)のカードをたくさん作り、数字のカードも用意して子どもに答えを選ばせます。
まとめ
ドッツカードの効果を高めるやり方は?ドーマン博士から学ぶ7つのポイント
①ドッツカードはできるだけ早くスタートする。
②親子ともに楽しくリラックスして取り組む。
③ドッツカードを見せる時はすばやく・短時間で行う。
④ひんぱんに新しい材料(カード)を加える。
⑤教え方に一貫性をもたせる。
⑥テストはしないが、問題を解く機会(=アウトプット)は必要。
⑦正しいステップで教える
ご紹介したドーマン博士の「赤ちゃんに算数をどう教えるか」は、ドッツカードを手作りする前提で書かれています。
「100枚以上のドッツカードを手作りする時間も気力もない・・・」
「毎日、取り組みに合わせてカードをセッティングするのも大変そう・・・」
・・・という方は、63日分のドッツカードが、日にちごとにセッティングされている七田式のドッツセットを使うのも一つの手。
「もはや自分でフラッシュすることすら面倒・・・」
・・・という方は、2,352枚のフラッシュカードと1,196枚のかず・数字カードがタブレット一台に入ったインターネット不要のタブレット知育教材「天神」幼児タブレット版を検討してみるのもアリかもしれません。
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