ABA(応用行動分析)とは、一言でいうと「行動の理由を分析して、よい行動を増やす方法」。
人間の「行動」とその「前後にある環境」に注目し、望ましい行動を増やしたり、不適切な行動を減らしたりするための心理学の理論と実践で、近年、自閉症をはじめとする発達障害を持つ子どもたちの療育方法として関心が集まっています。
『イラストでわかる ABA実践マニュアル: 発達障害の子のやる気を引き出す行動療法』は、主に2~4歳程度の自閉症児を念頭に置いて、ご家庭でABAセラピーを行うことを念頭に書かれていますが…

イラストでわかる ABA実践マニュアル: 発達障害の子のやる気を引き出す行動療法
もともとABAは「人間全体の行動の法則」を研究する学問(行動分析学)から生まれており、障害の有無に関わらず、「学習や習慣化の効率を上げるメソッド」として教育やスポーツ、ビジネスの現場でも広く活用されています。
そのため本書に書かれている内容も、お子さんを持つすべてのご家庭で参考にしていただける内容になっています。
今回の記事では、本書『イラストでわかる ABA実践マニュアル: 発達障害の子のやる気を引き出す行動療法』を参考に、就学前のお子さんにABAプログラムを用いて名詞(もののなまえ)、動詞(うごきことば)、形容詞(ようすことば)を教える方法についてご紹介します。
ABA(応用行動分析)の教え方4つの技法
①プロンプト
プロンプトとは「促す」という意味で、 子どもが正解(望ましい行動)を選べるように出す「手助け」のこと。
子どもに最初から正解させて「ほめられる体験」を積ませることがプロンプトの目的。
適切なプロンプトを怠ると、何度も失敗することで子どもはやる気を失ってしまいかねません。
最初はプロンプトによりじゅうぶんに手助けをしますが、慣れてきたら徐々にヒントを減らしていく(フェーディング)ことで、自力でできるように導きます。
刺激プロンプト
刺激(= 指示の言葉や教材)にヒントを組み込むことを「刺激 プロンプト」と言います。
問題の出し方を工夫して正解を選びやすくすることで、はじめから「答えが目立っている」状態を作ります。
刺激プロンプトの例
・「りんごはどれ?」と聞くとき、正解のりんごのカードだけを子どものすぐ近くに置き、正解以外のカードは遠くに置く。
・形を教えるとき、正解の「まる」のカードだけを大きくしたり、キラキラさせたり、目立つ色にしたりして、視覚的に目立たせる。
・ 文字の練習で、薄いグレーの下書き(なぞり書き)を用意しておく。
反応プロンプト
子どもの行動( 反応)に直接はたらきかけるプロンプト。
子どもの手に 大人の手を添えてやり方を教える、正解を指さす、見本を見せる等して手助けをします。
その場ですぐに手助けできるため、新しい動作をゼロから教える時には非常に有効です。
反応プロンプトの具体例
・スプーンを持つ練習で、親が後ろから子どもの手を包み込むように持って、一緒に口まで運ぶ。
・ 「バイバイして」と言いながら、親が先にバイバイの手本を見せて真似させる。
・おやつをもらう場面で「ありがとう」と言わせたいときに、親が先に「あ……?」と最初の一文字を教えてあげる。
・「靴を履いて」と言いながら、靴を指さして教える。
誤反応・無反応への対処
子どもが正解しなかった時は、「違う」と言わずに無視して少し間を開け、次の試行ではプロンプトして正解させます。
また、子どもが反応しない時は指示を繰り返すのではなく、黙って5秒 待ちます。
5秒間反応がなかったら改めて指示を出し、 今度はプロンプトして正解させます
②強化
「強化」とは、行動の直後にごほうび(本人によって”良いこと”)を与えてその行動を増やすこと。
「この行動をすると良いことがある!」と脳に覚えさせ、次もその行動が起こる確率を高めます。
ごほうび(強化子)は、ほめ言葉、おやつ、シール、体を使ったもの(だっこ、高い高い、ぐるぐる等)、大好きな動画を見るなど、本人が喜ぶものなら何でもOK。
社会性に遅れが見られる子どもは、ほめ言葉だけだと十分に強化されないため、ほめ言葉と同時にお菓子やくすりなどの感覚的なごほうびを与えます。
強化のコツ
・正反応(指示や課題への正しい答えや適切な動作)から1秒以内に強化
・強化子(ごほうび)にバラエティーを持たせる
・ほめ言葉は心を込めて大げさに
・強化子(ごほうび)は少しずつ与える
・強化子(ごほうび)を徐々に間引く
・ こまめに休憩を取る
③ディスクリート トライアル(不連続試行)
ABA では子どもに何かを教えるとき、 通常は
指示→( 必要なら)プロンプト→ 子どもの反応→ 強化
というサイクルで教えます。
この1サイクルを試行(トライアル)と呼びます。
試行(トライアル)の例
先生「リンゴはどれ?(指示)」→ 子「(指さす)」→ 先生「正解!(ほめる)」
ディスクリートトライアル( 不連続試行)とは、一つの試行と次の試行との間に、短いけれどはっきりとした間を空けること。
試行の初めと終わりが子どもにとって明確でわかりやすく、集中力が続きにくい子でも「今何をすべきか」が伝わりやすくなります。
ランダムローテーション
ある指示に従って行動できたと判断するには、その指示に答えられたことだけでは十分ではありません。
最低限、その指示ともうひとつ別の指示を出してみて、子どもがその2つの指示をちゃんと区別しているかどうか確かめる必要があります。
「ランダムローテーション」は、2つ以上の指示を不規則(ランダム)に出して、指示通りにできるかを確認することで、スキルが本当に定着したかを確かめるもの。
ランダムローテーションの例
「リンゴどれ?」の次にすぐ「バナナどれ?」、その次に「お鼻どこ?」と混ぜる。
「さっきと同じことをすればいいや」という当てずっぽうを防ぎ、指示の内容をしっかり理解して行動できているかを確かめるのが目的です。
ランダム ローテーションのコツ
・ポーカーフェイス(表情でヒントを与えない)
・余計なヒントを出さない(正解の方をちらっと見てしまう等)
・失敗したら、それについてプロンプトする。
・徐々にプロンプトを減らしていく。
・教材の配置をときどき変える
ABAプログラムを用いた「ことば」の教え方
名詞(ものの名前)①選ばせる
ものの名前を教える方法には、 「受容的命名」と「表出的命名」の2つがあります。
受容的命名(じゅようてきめいめい)
相手が言った言葉を理解して、正しい物を選んだり指し示したりすること(語彙の理解)
受容的命名のやり取り例:
親:「りんごはどれ?」
子:(並んだカードの中から、りんごのカードを指さす・取る)
子ども自身が声に出す必要はありません。「言葉の意味が分かっている」状態を指します。
表出的命名(ひょうしゅつてきめいめい)
対象物を見て、その名前を自分から正しく声に出して言うこと(発語、呼称)
表出的命名のやり取り例:
親:(りんごのカードを見せて)「これは何?」
子:「りんご!」
言葉を聞いて理解するだけでなく、自分で声を出して名前を言う高度なステップ。
まず「りんご」という音と実物を一致させる(受容:選べるようになる)。
次に、それを見て「りんご」と言えるように練習する(表出:言えるようになる)。
理解(受容)ができていないのに、無理に言わせる(表出)練習をすると、子どもは混乱してしまいます。
お家で練習するときは、以下の順番でステップアップしてみましょう。
2枚のカード(例:バナナとりんご)を置いて「りんご取って」ステップ2(表出)
りんごだけを見せて「これ何?」ステップ3(表出のプロンプト)
もし言えなければ、親が「り……?」と最初の一文字を教える(反応プロンプト)。
①1つずつ印象付ける
子どもになじみのある動物や日常生活で使う道具を教材にします 。

例:コップを用いて
1.テーブルの上にコップを1つだけ置きます。
2.「コップ」と言いながら子どもの手を取り、コップに触らせます。(プロンプト)
3.プロンプトを徐々に減らしていき、言葉の指示だけ(「コップ」と言う)で反応できるようにします。
正しくできたら強化します。
4.コップが触れるようになったら、コップのかわりに2つ目のもの( 例:リンゴ)をテーブルに置き、 同じように「リンゴ」と言って触らせます
➁ 最初の2つのものの区別


1.テーブルの上にコップとリンゴを互いに少し離して置きます。
2.「コップ」と言ってコップに触らせます。はじめはプロンプトします。
3.プロンプトなしでコップに触れるようになったら、次は「リンゴ」と言ってリンゴに触らせます。
これも、プロンプトなしで触れるようになるまで続けます。
コップとリンゴをそれぞれ2~3回ずつ交互に言います。
はじめはプロンプトします。
4.一方からもう一方に移るとき、プロンプトが全くいらないか、1回だけで十分になったらランダムローテーションに移行します。
5.コップとリンゴをランダムな順番で言って、10回中8回正解できるようになるまで休憩を挟みながら練習を続けます。
③3つ目のものを導入する

2つのものの名前が区別できるようになったら、3つ目のものを導入します。(例: スプーン)
やり方は➁ のステップと同じ。
初めは コップとスプーンで練習し、次はリンゴとスプーンで練習します。
どちらもランダムローテーションに成功したら、3つを並べてランダムローテーションします。
4つ目以降も同じですが、だんだん、いちいちランダムローテーションしなくても数試行ずつ確かめるだけでよくなってきます。
④指示行動
ものの名前がわかるようになったら、さらに発展の課題として「〇〇ちょうだい」「〇〇 取ってきて」などの指示を出します。
その指示を受けて、手渡す・持ってくる課題を行います。
名詞(ものの名前)➁言わせる
「これ何?」と聞いて、 子どもがその名前を答えるのが表出的命名。
受容的命名と単語模倣ができるようになったら、表出的命名の課題に取り組みます。
例えば、ゾウのおもちゃを指さして「これ何?」と聞き、 子どもが「ゾウ」と答えられるよう促します。
①選んだ直後に言わせる
表出的命名(言わせる)に使うものは、受容的命名(選ばせる)で子どもがよく名前をわかっていて、しかも 音声模倣で少なくとも他のものと聞き分けられる程度に模倣できるものを選びます。
できれば受容的命名の時に、子どもが自発的にそのものの名前(の一部)を模倣しながらそのものを触れるようになっていると好都合です。
例:ゾウを選ぶ時に「ゾウ」と言う、コップを選ぶときに「(コッ)プ」と言う など
1.受容的命名でそのものを選ばせた後に、そのものを取り上げて名前を言わせます。
例: テーブルの上にゾウとコップを並べ、 大人が「ゾウ」と言います。
2.子どもがゾウを触ったら、あなたがすぐにゾウを持ち上げ、指でゾウをトントンとつつきながら「ゾウ」 と言います。子どもが「ゾウ」と真似できたら強化します。
3.コップ も同様に行います。
「コップ」 と言って子どもがコップを選んだ直後に、あなたがコップを取り上げて指でつつきながら「コップ」と言い、 子どもに真似させます。
これを何回かずつ交互に繰り返しながら だんだんプロンプトを減らしていきます。
例えば 「コップ」 と言ってコップを選ばせた後 、大人がコップを持ち上げて「こ…」とだけ言います。
4.子どもがコップと言えたら強化します。
5.さらにプロンプトを減らしていき、 最後にはコップを持ち上げて指でつつくだけで「コップ」と言えるようにします。
➁名前を言わせる
受容的命名の直後にそのものの名前を言うことが上手になってきたら、次は受容的命名から表出的命名を独立させます。
こちらが名前を言わずにいきなりそのものを取り上げて、そのものの名前を言わせます。
教え方は①の受容的命名→表出的命名の訓練の途中で、例えば「ゾウ」と言ってゾウを選ばせ、 直後に大人がゾウを取り上げて、子どもに「ゾウ」と言わせた後、今度はこちらは「コップ」と言わずにいきなりコップを持ち上げ、 指でつついて子どもに「コップ」と言わせます。
最初は「こ…」と言って プロンプトしましょう。
上手になったら 「これ何?」の質問文も導入します。
動詞(うごきことば)
表出的命名(名前が言える)のレパートリーが増えてきたら、それと並行して動詞の表出を練習し始めます。
① 動作の幼児語から教える
最初は「バイバイ」「トントン」などの幼児語から教え始めましょう。
「~してる」という 動詞本来の言い方は、言葉が出はじめたばかりの子どもには難しくなります。
1. 子どもに「バイバイ」と指示を出します。
2.子どもがバイバイしたら、直後に大人も バイバイして「何してる?」と聞きます。
3.すぐに「バイバイ」と言ってやり( プロンプト)、子どもに「バイバイ」と真似させ強化します。
4.徐々にプロンプトを減らして、「何してる?」 に対して「バイバイ」と言えるようにします。
5.「バイバイ」と指示を出さずに、手を振る動作だけを見せます。
すぐに「何してる?」と聞いて「バイバイ」と言えるようにします。
上手に言えるようになったら、他の動作も同じように練習します。
「何してる?」 をオウム返ししてしまう子どもの場合は、黙って動作をして見せ、それと同時に「バ…」 と頭文字だけ 言ってプロンプトしてみましょう。
➁本来の動詞(~する、~した)を教える
音声模倣が上手にできるようになったら、「持ってる」「 落ちた」など、本来の動詞を教え始めます。
動詞によっては「~してる」より「~した」の形で教えた方が良いものもあります。
「投げた」「 落ちた」「 蹴った」など、始まったとほぼ同時に終了してしまう動詞は過去形の形で教えます。
「何してる?」と言わなくても、大人が指差しするだけで「~してる」と言えるようにしていきます 。
形容詞(ようすことば)
「大きい」「小さい」「たくさん」「 少し」のような基本的な形容詞(もののようすをあらわすことば)を教えます 。
色や形の名前がある程度 言えるようになってから取り組みましょう。
大きい・小さい
「大きい・小さい」を教えるには、色や形が 全く同じで大きさだけはっきり違う2つのものを5~6種類 用意します。
大小のマッチングには同じ大きさのものが数組必要です。
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おもちゃ 知育玩具 学習玩具 ☆七田式教材☆ くまのひもとおし☆★
七田(しちだ)の「くまのひもとおし」は、6色(赤、青、黄、緑、紫、オレンジ)×3サイズ(大、中、小)、計108個のくまさんが揃っているので、『大小の比較』で、色や形がまったく同じで大きさが違うものが必要な際に便利な教材。

基本の「ひもとおし」として遊ぶだけでなく、幼児期に身につけておきたいさまざまな概念を学ぶことができるおすすめの教材です。
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① 大小のマッチング
大小の概念を理解する前提として、大きさに着目したマッチングを教えます。
大きいものは大きいもの同士、 小さいものは小さいもの同士を一緒にさせます。
例:スプーンを用いて
1.2枚の台紙を用意し、一方に大きいスプーン、もう一方に 小さいスプーンを置きます。
2.子どもに大きいスプーンを1本渡し、「いっしょにして おおきい」と言って、大きいスプーンの台紙の上に置かせます。
3.大きいと小さいでランダムローテーションします
②「大きい」「小さい」を選ばせる
「大きい」「小さい」の指示で選ばせます。
1.2枚の台紙の一方に大きいもの、もう一方に小さいものを置きます。
2.「大きい」と言って大きい方を、「小さい」と言って小さい方を触らせます 。ランダムローテーションします。
3.プロンプトとして「大きい」という時は大きい声を出し両手を広げます。「小さい」の時は小声で言い、両手を狭めて小ささを表します。
③「大きい」「小さい」を言わせる
大小の受容的命名(「大きいほう」「小さいほう」を選ぶ)ができるようになったら、選ばせた直後に「こっちは?」 と聞いて「大きい」「 小さい」と言わせます。
たくさん・少し
数や量の「多い・少ない」を教えます。
「 多い・少ない」「たくさん・少し」「 いっぱい・ちょっとなど、数や量に関する日本語の表現はいくつかありますが、 通常「たくさん・ 少し」から教えていきます。
① 「たくさん」「少し」を選ばせる
紙皿などの上にビーズ やおはじきを置いて「たくさん・少し」を教えます。教え方は大小と同じ。
たくさんのお皿と少しのお皿の見た目の違いをはっきりさせましょう。
② 「たくさん」「少し」を言わせる
大人が、ビーズがたくさん入っているお皿を手で囲むようにして「こっちが?」と聞き、「たくさん」と言わせます。「少し」も同じように行います。
その他の形容詞
「高い・低い」
2つの同じものを大人が両手に持ち、ひとつは高く、ひとつは低く持ちます。
「 高い」と言って高い方を選ばせます。
「長い・短い」
ひもや鉛筆など、同じもので長さの違うものを用いて「長い」「短い」を選ばせます。
まとめ
ABA(応用行動分析)の教え方4つの技法
①プロンプト
子どもが正解(望ましい行動)を選べるように出す「ヒント」「手助け」のこと。
最初はプロンプトをして正解させ、「ほめられる体験」を積ませる。
②強化
行動の直後にごほうび(本人によって”良いこと”)を与えてその行動を増やすこと。
「この行動をすると良いことがある!」と脳に覚えさせ、次もその行動が起こる確率を高める。
③ディスクリート トライアル(不連続試行)
一つの試行と次の試行との間に、短いけれどはっきりとした間を空けること。
試行の初めと終わりが明確でわかりやすく、「今何をすべきか」が伝わりやすくなる。
※トライアル(試行)
指示→( 必要なら)プロンプト→ 子どもの反応→ 強化
…の1サイクル
④ ランダムローテーション
2つ以上の指示を不規則(ランダム)に出して、指示通りにできるかを確認することで、スキルが本当に定着したかを確かめること。
「受容的命名」と「表出的命名」
ABAセラピーでは通常、「受容的命名」から先に教えます。
受容的命名(じゅようてきめいめい)
相手が言った言葉を理解して、正しい対象物を選んだり指し示したりすること。
子ども自身が声に出す必要はありません。「言葉の意味が分かっている」状態。
(「語彙の理解」)
表出的命名(ひょうしゅつてきめいめい)
対象物を見て、その名前を自分から正しく声に出して言うこと。
言葉を聞いて理解するだけでなく、自分で声を出して名前を言う高度なステップ。(「発語」や「呼称」)
物や人の名前( 名詞)、 動き( 動詞)、 色や形( 形容詞)などを言えるようになったら、それらを組み合わせて2 語文の練習をしていきます。
