就学前のお子さんが「いくつまで数を数えられるか」が気になる、という方は多くいらっしゃると思います。
そもそも正しく「数を数える」(計数)ためにはどんな力が必要になるのでしょうか?
今回は、数理解研究について書かれた書籍『認知心理学からみた数の理解』を参考に、
・計数(数を数える)
・数唱(数を唱える)
について、子どもがどのような段階を経てその能力を獲得していくのかについてお伝えします。
正しい計数(数を数える)に必要な5つの原理
モノの数を数えること(計数)には、子どものさまざまな数理解が反映されていることが、ゲルマンとガリステルによって明らかにされています。
正しい計数ができるために必要な5つの原理(ゲルマンとガリステル 1978)
①1対1対応
②安定した順序
③基数性
④順序無関連
⑤抽象性
①1対1対応
「1対1対応」は、数える対象のモノ1つに対し、数詞(いち、に、さん・・・)1つを当てはめること。
1つのものに数の名前を1つだけ割り当てることができるという、数理解の最も基礎的な原理です。
ゲルマンの実験(1972)
2個対3個の計数において、2歳児は80%、3歳児は86%、4歳児は100%正しい1対1対応を行っていた。
ゲルマンによると、2歳児でもかなり高い割合で1対1対応ができるということがわかります。
②安定した順序
「安定した順序」とは、計数に用いられる数詞が常に同じ順序で配列される原理のこと。
正しい順序でなくても、数詞が違うだけで安定した順序で数えている場合もあります。(常に「1,2,3,4,8,10」の順に数えるなど)
ゲルマンの実験(1972)
2個対3個の計数において、2歳児で64%、3歳児で92%、4歳児で100%の子どもが安定した順序を持っていた。
③基数性
「基数性」とは、あるモノの集合を数えた場合、最後の数がその集合の大きさを示すという原理のこと。
基数性の原理を用いることにより、ある集合にどれほどのモノが含まれているかを計数により決めることができます。
ゲルマンの実験(1972)
2個対3個の計数において、2歳児で100%、3歳児で96%、4歳児で91%の子どもが最後の数詞を反復して言う、または最後の数詞を特に強調して言うことなどが見られた。
このことにより、ほとんどの幼児が基数性に従っていると考えられます。
④順序無関連
「順序無関連」とは、数える順序に関係なく、モノの集合をどこから数えても全体の集合の個数には変化がないという原理
ゲルマンとガリステル(1978)
全体の試行の60%以上の基準を満たした者は3歳児で31%、4歳児で69%、5歳児で94%
⑤抽象性
「抽象性」とは、数えるモノが何であろうとまったく関係がないという原理。
色が赤であろうと青であろうと、形が丸であろうと三角であろうと、またモノがみかんであろうとりんごであろうと、どんな集合にも上で述べた①から④までの原理が使えるということ。
ゲルマンとタッカー(1975)によると、幼児もすでに抽象性の原理を獲得していることがわかっています。
数唱発達の5段階モデル
「数唱」とは数を順番に唱えること。
3歳ごろまでには20以下、4歳くらいまでには20以上、8歳で100までの数唱が可能になります。
数唱は単なる機械的な暗記のようにも思えますが、幼児は数唱の中に規則性を理解しており、数唱の発達は簡単な足し算や引き算の基礎になっています。
数唱がどのような段階を経て発達していくかを、「フュソンの数唱発達の5段階モデル」をもとにご紹介します。
「フュソンの数唱発達の5段階モデル」
①糸状段階
②分割できない数詞の系列段階
③数詞の系列の分割(breakable chain)段階
④数詞の抽象化
⑤数の基本的理解
①糸状段階
「糸状段階」では個々の数詞は全体の1つの系列であり、数詞一つ一つが糸でつなげられたようにしか言えません。
また、ある数は1多いとか1少ないということは全く理解できていません。
単なる数詞の機械的記憶にしか過ぎず、数詞が思考の対象にはならない段階です。
②分割できない数詞の系列段階
1からある数までの上昇方向(小さい数→大きい数)の数唱がある程度できるようになる段階。
この段階でも、まだ数の系列は全体として理解されており、部分に分割できません。
また、この段階では数の規則性も理解している状態です。
シーグラーとロビンソンの研究(1982)
3・4・5歳児に数えられるところまで数えるよう求め、どこで数えるのをやめるか観察した。
⇒20以上の数では、29,39,49など、9がつく数のところで数唱をやめる子どもが多い。
しかし、20以下の数ではこのような特定のポイントでやめる傾向は見られていない。
研究の結果より、幼児が10の位に1の位を付け加えるという規則性を理解していたために、1~9までの数字のリストを20以上の数唱に適用した結果、次の10の位が何かを知らない場合に9で数唱をやめたということが言えます。
また、この段階で基数や序数の原理は理解しており、数唱を用いて足し算・引き算が可能になります。
count all(全て数える)
対象物を1からすべて数え上げるやり方。
例:3個のりんごと2個のりんご、あわせていくつ?
🍎🍎🍎いち、に、さん 🍎🍎(続けて)よん、ご
つまり、3+2=5
こうした足し算・引き算ができるということは、幼児が足し算では2つの数の合計を数え、引き算では2つの数の差を数えるという基本的な意味を理解していることになります。
③数詞の系列の分割(breakable chain)段階
1からある数まで、またある数から数えられるところの数までの数唱ができる。
また、ある数から別な数までの数唱もできる段階。
(この段階では上昇方向だけでなく下降方向の数唱も可能。)
例:「9から5まで数えてごらん」「きゅう、はち、なな、ろく、ご」
なお、ある数から別な数までの数唱ができるためには、数唱をしながら、どこでストップするか(数唱をやめるべき数)を記憶の中にとどめておかなければなりません。
こうした数唱が可能になると、かなり効率的な足し算ができるように。
被加数(足される数)から加数分(足す数)だけ数え上げます。
例:5+3の場合、1からではなく5から数えて答えを出す。
🍎🍎🍎🍎「5」 🍎🍎🍎「6、7、8」
つまり、5+3=8
count on(数え足し)は、count all(すべて数える)とくらべて時間も少なく、数える際の誤りも少ない効率的な方略となります。
④数詞の抽象化
「数詞の抽象化」とは、数詞の系列を別々の独立した数として理解するようになる段階。
ある数からnだけ上昇方向に数えることや、ある数からある数にかけてどれだけの数があるかを数えることもできるように。
例:「3から2つ数えましょう」「さん、し、ご」
例:「5から7までいくつの数がありますか?」「2つ」
こうしたことができるようになるためには、数えながら、数えた数がいくつを記憶に保持しておくこと(keeping track)が必要になります。
そして、数えた数がいくつであるかを保持しておくために、頭の中に数直線を形成した心的数直線(mental number line)を用いることができます。
⑤数の基本的理解
数詞を上昇方向でも下降方向でも容易に言えるようになり、方向を変化させることも柔軟にできるように。
また数詞の分割も自由にできるようになり、数詞を子どもが理解しやすいように分割して足し算を行うようになります。
まとめ
①1対1対応
②安定した順序
③基数性
④順序無関連
⑤抽象性
①糸状段階
②分割できない数詞の系列段階
③数詞の系列の分割(breakable chain)段階
④数詞の抽象化
⑤数の基本的理解
