『長所活用型指導で子どもが変わる』は、「継次処理」と「同時処理」という2つの認知スタイル(ものごとのわかり方)を取り上げ、子どもの得意な認知スタイルを活用して学習のつまずきを改善する『長所活用型指導』を教えてくれる本。
本書では、2歳半~7歳位までの認知発達レベルに相当する、特殊学級や養護学校に在籍する子どもを対象としていますが・・・
いわゆる定型発達のお子さんにも「長所活用型」すなわち”子どもの得意な認知スタイルで指導する”という考え方で学習のつまずきや悩みを解決したり、より学習の効果を高めるため、私も教室のレッスンに取り入れています。
今回の記事では、本書の中から、子どもの得意な認知処理様式を生かした「文字(ひらがな)の読み」の指導法について、ご家庭で取り組みやすいようアレンジして、また、ご自宅で取り組む場合に使用できる教材もご紹介しながらお伝えします。

長所活用型指導で子どもが変わる: 認知処理様式を生かす国語・算数・作業学習の指導方略
認知処理様式を生かす「長所活用型指導」とは
「認知機能」とは、見たり聞いたりしたものを理解したり記憶するといった、脳のさまざまな機能のこと。
すなわち、
↓
脳の中枢での処理(知覚・記憶・思考・理解・判断)
↓
アウトプット(言う・書く・行う)
これらの一連の活動プロセスのことを指します。
そして、ものごとの認知のしかた(わかり方)には、「継次処理」スタイルと「同時処理」スタイルの2つのパターンがあり、どちらのスタイルが得意かによって、効果的な学習の方法が変わってきます。
通常、多少の強弱はあっても2つの認知処理スタイルがバランスよく発達するため、どちらの認知処理スタイルで教えられても理解できないことはありません。
しかしながら、学習につまずきのある子どもの多くは得意・不得意が極端なため、不得意な認知処理スタイルで教わっても理解がむずかしくなってしまいます。
その場合、学習しても効果が上がらないだけでなく、その課題に対する苦手意識が強くなって意欲の低下を引き起こし、学習すればするほどかえって逆効果になってしまう危険性も。
そこで、お子さんが勉強につまずいている場合には、お子さんの得意な認知処理スタイルに合った学習方法を用いることが大切になります。
①継次処理スタイル
「継次的」とは、時間的な順序にしたがってものごとがなされること。
すなわち、一つ一つの情報を時間的な順序で処理していくのが「継次処理スタイル」の特徴です。
「継次処理スタイル」の特徴
・情報を一つ一つ順番に理解し、それらをつないで全体を捉えることが得意(部分→全体へ)
・聴覚からの情報収集・理解が得意
そのため、学習するときには始めから順序だてて行うことを好みます。
ひらがなの読みの学習においては、1文字の読みから単語の読みへと発展させていきます。
②同時処理スタイル
複数の情報を、その関連性に着目して全体的に処理するのが「同時処理スタイル」。
継次処理が得意な子どもとは反対に、「全体から部分へ」という方向を踏まえます。
「同時処理スタイル」の特徴
・物事の全体像をイメージし、情報と情報の関係を把握していくことが得意(全体→部分へ)
・視覚からの情報収集・理解が得意
ひらがなの読みにおいては、見慣れた単語を1つのかたまりとして読みと対応させたり、五十音表の配列をヒントにするなど視覚的・空間的手がかりを利用して、文字と音とを対応させていきます。
発達段階に応じた「ひらがなの読み」の指導
子どもの得意な認知処理様式を生かした、「ひらがなの読み」における長所活用型指導のステップは以下のとおり。
長所活用型指導「ひらがなの読み」のステップ
①形の見分け
➁1文字の読み
③名前の読み
④物と音と文字の一致
➄単語の音節分解
⑥単語の中の1文字の読み(音節抽出)
形の見分け
継次処理スタイルの指導法
【ねらい】形の違いを見分けることができるようになる
【内容】図形や具体物の絵がかかれたカードの細部に注目しながら見くらべて形の違いを見分ける。
【教材】図形が描かれた絵カード



同時処理スタイルの指導法
【ねらい】形の違いを見分けることができるようになる
【内容】】図形や具体物の絵がかかれたいくつかのカードの中から同じものを見つける。
【教材】図形が描かれた絵カード


図2

図3
・図1の絵カードと同じ形を、違いがはっきりわかる図2の3種類の中から見つけさせる。
・図1の形と特徴が似ている形(図3)の中から、同じ形を見つけさせる。
<ポイント>①図形の特徴の全体像に目を向けさせるため、いくつかの選択肢の中から同じ図形を探させる。
<ポイント>➁図形の比較をする中で、選択肢の中からまったく違う図形を消去法で選ばせ、部分の比較をしていけるようにする。
1文字の読み
この段階では、五十音すべての文字を読めるようになることよりも、いくつかのひらがなが読めるようになることを目指しましょう。
継次処理スタイルの指導法
【ねらい】ひらがな1文字を読めるようになる。
【内容】絵と文字、または文字だけのカードでカルタ取りをする。
【教材】①絵と文字のカード ➁文字だけのカード
①五十音の「あいうえお」を復唱する。

文字だけのカード5枚(あ行)を順番に並べ、指さしながら「あいうえお」と連続して読み上げ、復唱させる。
※復唱させるときは、フレーズとしての音の流れに注目させる。
➁絵と文字のカードでひらがなを読む。

①と同じ行のカード(絵と文字)5枚を並べ、「いぬの『い』はどれ?」などと問いかけカードを取らせる。
カードを取ったときに、カードの文字を指さして「『い』だね!」と声をかけ、絵だけではなく文字にも注目するように促す。
③文字だけのカードでひらがなを読む。

文字だけのカードを「あいうえお」の順に並べ、「いぬの『い』はどれ?」などと問いかけカードを取らせる。




同時処理スタイルの指導法
【ねらい】ひらがな1文字を読めるようになる。
【内容】五十音表を使い、サイコロで出た文字を探す。
【教材】①6面に文字(同じ行)が書いてあるサイコロ ➁ひらがな五十音表 ③五十音の一部を隠す紙
①五十音表の「あ行」の中から、サイコロで示された文字を探す。
・五十音表の「あ行」以外の部分を隠して「あいうえお」だけ見えるようにしておく。
文字が書かれたサイコロを振り、出た文字を探させる。
・「か行」「さ行」についても同様に行う。
➁五十音表の複数の行から、サイコロで出た文字を探す。
・「あ行」と「か行」、「あ行」と「か行」と「さ行」・・・というように行を増やして行っていく。
③五十音表のすべての行の中から、サイコロで出た文字を探す。
・五十音表の全部を使い、任意のサイコロを振って出た文字を探させる。
・文字を見つけた時は、「そうだね、『な』だね。」などと文字の読みを意識させる。
・文字を見つけられないときは、サイコロに書いていない文字を隠して探させる。
七田のものが余計なイラストなどなくシンプルで見やすいです。
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1つのさいころに同じ行の文字が書かれているものが意外とないので・・・
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名前の読み
継次処理スタイルの指導法
【ねらい】ひらがなで書かれた自分の名前がわかるようになる。
【内容】名前に使われている文字のカードを並べ替えて自分の名前を作る。
【教材】①文字カード ➁枠
①自分の名前を認識する。
子どもの名前をひらがなで書いたものを見せ、いちばん最初の文字に着目させる。
➁名前の最初の文字がわかる。
自分の名前の最初の文字と、関係ない別の文字の2枚を見せ、自分の名前の文字を取らせる。
文字カードを指差しながら、「りんこの『り』だね」などと教える。
2種類から選べるようになったら、3種類の中から選ばせる。
③自分の名前を作る。
名前の文字を枠に順番に並べて自分の名前を作る。
・「次は りんこの『ん』だよ」などと促す。
・全部並べたら、1文字ずつ指さしながらゆっくりと読み上げる。
・名前ができたら、姓(苗字)も作る。
同時処理スタイルの指導法
【ねらい】ひらがなで書かれた自分の名前がわかるようになる。
【内容】日常使うものに名前のシールを貼り、他の人の名前と区別できるようにして、自分の名前の文字を覚える。
【教材】ラベルシール、目印となるイラストのシール3種
①名前シールを見て自分の名前を認識する。

ラベルシールに子どもの名前を書き、目印となるシールを貼ったものを用意する。名前シールを持ち物に貼り、自分の名前の文字を意識させる。
➁自分の名前シールを選ぶ。
①と同じ子どもの名前シールと、他の2人の名前が書かれたシール(目印となるシールも違うものを貼る)を用意し、その中から自分の名前を見つけさせる。

・持ち物に貼った自分の名前シールと比べさせる。
・最初は、目印となるシールに着目させる。
③文字だけの名前シールで自分の名前を見つける。

物と音と文字の一致
継次処理スタイルの指導法
【ねらい】1音節からなることばの音と文字を一致させることができるようになる。
【内容】1音節からなるものの名前(目、手、歯)を題材として、文字カードや実際の身体部位の指さしをしながら文字と音をつなげる。
【教材】①文字カード ➁1音節からなる身体部位(目、手、歯)
同時処理スタイルの指導法
【ねらい】1音節からなることばの絵と文字を一致させることができるようになる。
【内容】絵カードと文字カードのマッチングをとおして文字の読みを理解させ、読ませる。
【教材】①切り口の異なる絵と文字のペアカード ➁切り口が同じ絵と文字のペアカード
①異なる切り口を手がかりに、絵と文字を組み合わせる。

絵と文字がペアとなった3組のカード(切り口が異なる)を用いて、絵と文字の組み合わせを行わせる。
➁絵カードを手がかりに、文字を読む。
絵と文字を組み合わせた状態で、絵を手がかりに文字を読ませる。初めは指導者が文字を指さしながら読み、 文字の読みが絵と一致することに気づかせる。
③同じ切り口のカードで、絵と文字を一致させる。

絵と文字がペアとなった3組のカード(切り口が同じ)を用いて、絵と文字の組み合わせを行わせる。
④絵カードなしで文字を読む。
文字カードだけを提示して、書かれてある文字を読ませる。
単語の音節分解
継次処理スタイルの指導法
【ねらい】2~3音節のことばを1音節ずつ区切って読むことができるようになる。
【内容】サイコロを振り、出た単語をタンバリンの音に合わせて1音節ずつ区切って読みながら、音節の数だけ進むゲームをする。
【教材】①動物の名前などを書いたサイコロ ➁タンバリン、すごろく
同時処理スタイルの指導法
【ねらい】2~3音節のことばを1音節ずつ区切って読むことができるようになる。
【内容】ことばと絵がかかれたカードを音節数に合わせて縦に切ったものを、絵合わせしながら単語を作る。
【教材】絵文字カード、文字カード



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単語の中の1文字の読み(音節抽出)
2つの単語をくらべ、同じ音を抽出させる方法(「うし」「うさぎ」の中から『う』を抽出すること)で文字の一般化を図ります。
継次処理スタイルの指導法
【ねらい】2つの単語を比べ、同じ文字があることに気づき、それが同じ語音であることがわかる。
【内容】同じ音節を含むものの絵カード(「うし」と「うま」)を示し、名前の文字を1文字ずつのカードから探させて、同じ音節(う)があることに気づかせる。
【教材】マス目に番号をつけた台紙、絵カード2枚、文字カード
①文字カードを並べて、動物名を作る。

動物カードと文字カードを提示して、マス目を手がかりに文字カードを並べさせる。
②2つの動物名に、同じ音節が使われていることを知る。

マス目の番号を手がかりに、同じ音節を探させる。
「何番の文字が同じかな?」→「1番」
「そうだね、1番の『う』が同じだね」
「うしの『う』と、うまの『う』が同じなんだよね」

同時処理スタイルの指導法
【ねらい】2つの単語を比べ、同じ文字があることに気づき、それが同じ語音であることがわかる。
【内容】同じ文字を含む2~3の単語の文字カード(白抜き文字)を用意し、同じ文字を赤マジックで塗る。
【教材】白抜き文字で作った文字カード



まとめ
①形の見分け
*継次処理スタイルの指導法
・2つの図形や絵の特徴を言語化して、形を見分けるときの手がかりとさせる。
・具体的な物から抽象的な形へと課題を用意し、形の見分けができるようにする。
*同時処理スタイルの指導法
・図形の特徴の全体像に目を向けさせるため、いくつかの選択肢の中から同じ図形を探させる。
・図形の比較をする中で、選択肢の中からまったく違う図形を消去法で選ばせ、部分の比較をしていけるようにする。
➁1文字の読み
*継次処理スタイルの指導法
・読み上げられたことばを注意深く聞かせ、言語的な手がかりを多く用いてカードを取らせていく中で、文字に興味を持たせる。
・最初は文字と絵を同時に提示し、次に文字だけを提示するよう段階的に指導する。
*同時処理スタイルの指導法
・文字の形に着目させて、視覚的手がかりをもとに同じ文字を探させる。
・五十音表の配列を空間位置関係としての手がかりにする。
③名前の読み
*継次処理スタイルの指導法
・姓名のうち、姓または名に出てくる文字が1文字ずつ順番に並んでいることを意識しながらカードを並べさせる。
*同時処理スタイルの指導法
・名前の横に目印となるシールを貼り、すぐ目がいくようにして、自分の名前の全体像に着目させる。
・靴箱や引出など、位置がいつも変わらない場所に名前シールを貼り、手がかりとさせる。
④物と音と文字の一致
*継次処理スタイルの指導法
・「実物と音」「実物と文字」「文字と音」のマッチングを別々に行い、段階的に理解させていく。
*同時処理スタイルの指導法
・カードの切り口を手がかりに、絵と文字を一致させる。
・絵を手がかりに、文字と音を一致させる。
➄単語の音節分解
*継次処理スタイルの指導法
・タンバリンの音に合わせて、1音節ずつ区切って読むことを意識させる。
・単語の音節の数だけ進むゲームをとおして、一音一音の部分に注目させる。
*同時処理スタイルの指導法
・2分割・3分割の絵合わせをしながら、カードに書かれた文字に関心を持たせる。
・カードの切れ目で文字を1音節ずつ区切って読むことを意識させる。
⑥単語の中の1文字の読み(音節抽出)
*継次処理スタイルの指導法
・動物の言語的手がかりやマス目を手がかりに、文字カードを並べさせる。
・マス目の上につけられた番号を手がかりに、同じ音節を探させる。
* 同時処理スタイルの指導法
・2つの単語の中に同じ文字が入っていることに気づかせるため、同じ文字を色分けして視覚的な手がかりにさせる。
・文字の形に注目させて同じ文字を探させる。
『長所活用型指導で子どもが変わる』は、通常学級で学習につまずきを示したり、通級による指導を受けている子どもを念頭に、子どもの得意な認知処理様式を活かした学習指導の方法を紹介してくれている本。 従来は、子どもの弱い能力を改善したりレベル[…]





