幼児教育に関心のある親御さんなら、おそらく「しちだ式」や「七田チャイルドアカデミー」の名前を一度は耳にしたことがあると思います。
女優の本田望結ちゃんや、姉でフィギアスケーターの本田真凛ちゃん、競泳の池江璃花子選手など、各分野で活躍する卒業生がいる一方で、「右脳教育って正直よくわからない」「フラッシュカードの弊害ってよく聞くけど・・・」といった、ネガティブなイメージを持つ方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
私は過去に七田チャイルドアカデミーで6年間、講師をしていたのですが、七田の講師を退職したのち、七田式でも右脳教育でもなく「知能因子論」をベースに思考力を伸ばすことを目的とした、ある意味「しちだ」の時とは真逆なスタイルの幼児教室を始め、現在に至ります。
つまり、「七田式は、私がやりたい幼児教育とは違った」ということです。
しかしながら、決して七田式やいわゆる「右脳教育」を否定している訳ではありませんので誤解していただきたくはないのですが・・・
その上で、私が講師時代に感じていた七田チャイルドアカデミーのレッスンの実情をふまえて、「どうして私が七田式ではなく真逆の幼児教室をするに至ったか」についてお話したいと思います。
七田チャイルドアカデミー元講師の私がお伝えする、 口コミではわからないレッスンの実情とは。
七田式のレッスンでは、「じっくり考える」ことはむずかしい。
七田式といえば右脳、というイメージがありますが、実際には「全脳教育」をうたっています。
無限の能力を引き出すには、右脳と左脳の両方をバランスよく使う必要があります。直感の「右脳」と、論理の「左脳」。七田式では両方の脳を活性化することでバランスよく働く土台を築きます。(七田チャイルドアカデミー ホームページより)
として、右脳だけでなく左脳にもバランスよく働きかけるレッスンをしています。
ちなみに右脳的な取組とは、フラッシュカード等で目や耳から刺激や情報をインプットしたり、イメージトレーニングやESP(あてっこ遊び)などで右脳の直観力・ひらめき力を鍛えること。
インプットした情報を文字や言葉でアウトプットする、言語を介して論理的に考えるのが「左脳的」な取り組みにあたります。(いわゆる一般的な知育教材やプリント教材などを使用します。)
この「右脳な取組」と「左脳的な取組」を、1レッスン50分のなかで行います。
教室によって「右脳的」な取組と「左脳的」な取組のバランスに多少の違いはあるにせよ、1レッスン50分のなかで数多くの取組を行いますので、ひとつの取組にかけられる時間が少ない、という事情があります。
そのため「自分のアタマでじっくり考える」というレッスンからは程遠いものになってしまっていたのです。
なお、体験レッスン等で七田式のレッスンを受けたことのある方は、1秒間に1~2枚の速さでめくられるフラッシュカードのスピードや、テンポよく次々と繰り出される数々の取り組みにビックリされた方も多いのではないかと思います。
これは、高速で大量の情報に対して動きだす右脳に働きかけるためであったり、「年齢プラス1分」しか続かないとも言われている幼児さんの集中力を切らさないためであったりと、目的があります。
しかしながら、左脳的な「じっくり考えて答えを導きだす」力も育てるには、このようなカリキュラム構成やレッスン時間の配分ではむずかしいなあ、というのが私の思いでした。
「右脳」=ひらめき、直感、「左脳」=論理、理屈
また、しちだのレッスンではじっくり考えるよりも、ぱっと素早く答えを出すことを求められる傾向があります。右脳の力は直感力やひらめき力なので、理屈を求めません。
ある課題に対して「どうやって考えるか、どうしてその答えにたどり着いたか」という理由はある意味どうでもよくて、答えがあっていればそれでOKなのです。
逆に言えば、「ぱっと短時間で答えを出すのが得意じゃなくても、じっくり考えればちゃんとできるのに・・・」という子にじっくり考えさせてあげることができない。
最後まで自分の力でやりとげるまで待ってあげられず、その子が達成感を得られないままレッスンを終えなければならなかったり、なんでも素早くできることが善である、のような雰囲気がありました。
そのため、向いているタイプの子にはいいけれど、そうでない子にはなかなか力を発揮できにくいレッスンになってしまっていたのです。
私が「七田式」の教室をしなかった理由。
もちろん右脳的な直感力やひらめき力も大事だし、右脳に何も働きかけなければどんどん使われなくなってしまうのも事実だけれど・・・
子どもたちが成長していく中で、じっくり考える力、筋道立てて答えを導きだしていく力、論理的思考力いわゆる「左脳的な力」がどんどん求められるようになってくるのではないか。
むしろ「左脳的」な力を伸ばすことに特化した幼児教育をしたい、というのが、私が「七田式」の”全脳教育”(右脳+左脳)ではなく、今の幼児教室(「知能因子論」をベースに思考力を伸ばすことを目的とした幼児教室)を始めた理由です。
これは、いわゆる「右脳的」な力すなわち直感力やひらめき力を育てることと、「左脳的」な力すなわち論理的思考力を育てることのどちらが正しくてどちらが間違っている、という話ではなくて、私が伸ばしてあげたいのは後者のほうであった、ということ。
二つを両立させるのがむずかしい場合にどちらを選ぶのか、という優先順位の問題ということです。
なお、ここではわかりやすく「右脳」と「左脳」という2つの対立軸のようにして書いていますが、本来それははっきりと2つにわけられるものではないと思います。
元講師の私が思う「七田式」のよいところ
私が七田の教室で見てきた子どもたち
とはいえ、最初にお伝えしたとおり、私が七田式をやめて違うメソッドの幼児教育をしているからといって、決して七田式やいわゆる「右脳教育」を否定しているというワケではありません。
たとえば百玉そろばんも「かず」を「量」として視覚的にイメージできるようインプットしていく、という意味では右脳的な手法ですが、現在の教室でもレッスンに取り入れています。
また年齢的にも、右脳が優位に働くと言われている3歳頃までは、右脳的なアプローチが有効であるとも思います。
私は七田の教室でのべ300人程のお子さんを担当してきましたが、その中には同年代の他のお子さんと比べて語彙が豊富だったり、記憶力が優れたお子さんがたくさんいました。
もちろん個人差がありますから、皆がみなそうというわけではありませんでしたし、またそうであっても、それが七田式教育の効果である、という因果関係が証明されているわけではないですが・・・。
七田式では、右脳が活発に働く0歳~3歳までの間を中心に、右脳にイメージ(映像)を媒介とした刺激を与えることで記憶力や直感力、発想力を育てていきます。
具体的にはフラッシュカードや歌を用いたことばや知識のインプット、また暗唱やリンク法、ペグ法といった記憶トレーニングなどがあります。
これらの教育方法が、豊富な語彙やすぐれた記憶力を育むのに有効な手段だったというのが、実際に七田でレッスンをして、子どもたちと接してきた経験から感じる実感です。
七田式 子どもの見方6つのポイント
七田式には「子どもの見方6つのポイント」というものがあります。
ざっと項目だけをあげると、以下の通りになります。
1.子どもの短所を見ない
2.子どもの成長を途中の過程と見る
3.完全主義で育てない
4.比較しない
5.学力中心で育てない
6.そのままを100点と見る
これは七田式にかぎらず、どのメソッドの幼児教育をする際にも、また子育て全般においても、心の持ち方として忘れず持ち続けていたいものとして、常に心に留めておきたい考え方だと認識しています。
最後に
とりとめもなくお話をしてきましたが、私が七田チャイルドアカデミー講師6年間の経験から思うことは、七田の教室に通うだけでは、左脳的な「じっくり考えて答えを導き出す力」すなわち論理的思考力を高めるのはむずかしいけど、右脳的な直観力やひらめき力、記憶力等を高めるには効果的、ということです。
※私の講師時代の経験が、すべての「七田」の教室に当てはまる訳ではないと思います。教室によってもカリキュラムの内容やレッスンの進め方には多少の違いがあると思いますので、くれぐれも、体験レッスンやトライアルコースなどに参加して、ご自身の目で確かめてみてくださいね。
数々の幼児教室やさまざまなメソッドがありますが、「どれが良くて、どれが悪い」というものではなく、「お子さんのどんな力を伸ばしてあげたいか」という親御さんの思いがあり、その実現のためにどの手法を選ぶのか、ということだと思いますので、すべてのお子さんにとって「良い」教育方法というものはないのだ、と思います。
私はお子さんの「じっくり考えて答えを導きだす力」を伸ばしてあげたい、という思いで日々レッスンをしていますので、同じ思いの親御さんには引き続き、ヒントになることをこれからもお伝えしていければと思っております。
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